
第六回 星と森国際短歌大会英語部門選評
歌題 : 「鳥」
代表的な日本の短歌の為のはかない歌題…露、愛、雪、落ち葉等の全ての中で、「鳥」はつかむのが最も難しい一つです。鳥の本質そのものが、人間の接触や残酷にも捕獲されて、その鳴く声は心を引き裂く様に悲しく聞こえる、監禁された鳥籠から常に逃がれようとしているのです。
ですから、鳥を正確な短歌の形式の中に閉じ込めようとすることは、骨折り損の殆んど不可能な仕事の様に見えます。短歌の正確な簡潔さは、ことばから成る籠ではないですか。野生の鳥が、閉じ込められている時に、自然の大空にいかにしてその羽ばたきを解き放ち、豊かな感情のこもる自由な調べを歌い上げるかは、われとわが身をぐうすることも出来ない弱さに課せられているのでしょうか。
これ等のことが、今年の大会参加者が投稿歌を作成するに当り、直面せざるを得なかったさまざまな問題のなかの一部と思われます。勿論、短歌は実に見事な文学的形式の一つにすぎないし、その三十一音節は小さな籠の金属の棒ではありません。それは、優美さと創造力と共に用いれば、自然に於ける森羅万象の雄大さの全てを含む事が出来る形式で、その中で我々は生け捕られた鳥の様に、生命を羽ばたき飛ばすのです。ただ五行だけのこの音節形式は、たとえ最初は堅苦しく見えても、感受性の優れた腕前をもってすれば、心が感じる無限の変化と、実在するあらゆる種類の果てしなく優美な肖像を表現する事が出来るのです。
そこで、今年三首の最も優れた短歌を選出するという困難な課題に直面した時、私は抑制された感情と結び合わされた独創性のある歌…稀で、若し不可能でないとして、英語で書かれた短歌の中で、私が見つけ出せるとしたら、理想的な歌を見つける事を望んでいました。そういう次第で今回もまた、大賞を与えることが出来るとは思いませんでした。けれども鳥の姿を通して、自然の様子を観察する中で、細部にわたり綿密な注意を払うことにより、感受性の表現が理想的に近い三首の投稿歌を見つけることが出来ました。
全体として、参加作品の傾向はぎこちなくそして不明瞭でした。私には大会に参加された人達が、自分で作った短歌の正しい音節を、注意深く数えているのが聞こえて来る様に思えましたが、それは恰も其の人達が編物の一部の編み目を数えている様でした。言葉の自然の流れを何とかうまく手に入れた人は、殆どいませんでした。皆さんは、五行の中に五ー七ー五ー七ー七の音節を書く練習をし、そうする事が「第二の天性」となるまで続けなければなりません。そうすれば音節の数の事を考える事なしに、自由に短歌を作る事が出来ます。投稿された多くの人が、正しい音節数の統制が出来ていませんでした。けれども、問題とされる様な一行に余分な音節を書き足す楽しみを許されるのは、名声が立証された短歌詩人のみです。初心者は、流れるように動くリズムの、音楽的感覚を修得する様努力すべきです。何故ならば、短歌は一つの音楽的形式だからです。不断の毎日の練習こそが、熟達を成し遂げる唯一の方法です。私が選んだ三首の短歌は、私見ですが、素晴らしい詩的将来性を示しています。三首とも形式の上でも正しく、そのうえ感情的にも表現に富んでおり、そして何よりもこの三首の歌は、鳥に対する鋭敏な観察力と真実の愛を表わしています。 |
James Kirkup
ジェームズ カーカップ |
署名 |
訳責:起本 操
翻訳日:2004年6月8日 |
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