アンドーラ    2003年5月23日
第五回 星と森国際短歌大会選考結果の分析


 尊敬されている星と森短歌大会への、英語の応募作品の選者として、英語が母国語でない人々からの作品に対し、私は常に充分考慮を払う様注意してきました。時としてそのような作者は、魅力をたたえた独創性のある詩の樣式を作り出しました。さらに、作品の質は年毎に進歩していると感じましたし、日本は勿論国際的な水準で短歌という芸術を助長する、比類のない勇気ある代表的な手本となる実例の未来に対し、大いなる希望を抱いていました。

 私は常に多大な熱意をもって、風雅で気高い優美さや感受性をはっきりと示す新らしい声や、優れた詩を見出す事を楽しみに待っていました。けれども、今年は高い水準に足りる、英語で詠まれた短歌三首を選ぶのは、不可能である事がわかりました。私には選ぼうと思えば、「まずさが最も少ない」投稿歌三首を選び出す事は出来ましたが、そうする事は投稿者に対しても私自身に対しても、不誠実になったであろうと信じます。同時に、そうする事は当大会の寛容な創立者、伊藤一夫氏のすでに得られている高い評判を低下させる事になったでしょう。劣った作品を奨励する事は又、日本語での投稿者により樹立された、高度な水準を下げる事になります。

 私の一般的な印象では、英語での投稿歌は今回の歌題となった「雪」のもつ、本当の自然の力や深い意味を実際に探求していませんでした。と言いますのは、外国の人にとりこの雪という言葉は、ただ三十一音節だけからなる詩の中に含めるには、巨大過ぎた様に見えました。(ここで私は、大半の投稿者の皆さんが、正しい音節数を厳格に守っておられる事を称賛すべきです。)とは言っても、短歌は五、七、五、七、七の音節からなる、五行の詩というだけではありません。それはただ枠組だけです。それは多くの変化がある形の上の表現に役立つ一形式です。けれども、内容は形式よりもさらに重要ですし、表現の仕方は内容と同様に本質的な要素で、加えるに、入念でリズミカルな流れと音楽的な言葉の選択が必要です。

 伊藤一夫氏から私に親切な指摘がありました。…雪、月、花…の三つは、日本に於ける最も伝統的な短歌の主題であると。氏の指摘通り、これ等の愛されている詩的主題は、最も遠い昔から日本の詩人達を刺激してきた事は、全く事実です。けれども英語で作詩してきた投稿者の殆んどの人達は、彼らを刺激するはずのこの立派な詩的伝統を持っていませんでした。勿論、雪を主題にした多くの有名な英詩はありますが、それ等の詩は生き生きと現実的且つ叙述的であり、日本の短歌の様に、この自然現象のもつ豊かな霊気を解明していません。西欧の考え方からすれば、そのことは抽象的すぎる解釈となります。私にはこのことが、投稿者が雪の多くの美しさを、精神的に評価し損う原因となったと思われます。この人達は、雪という主題が日本の芸術の全てに於いて、西欧の人々にとり、そのように意外な新事実となる、固有の文化的背景を持っていなかったのです。私達は、詩人や芸術家は雪そのものとなり、その声で話すと感じます。英語の投稿者達は、ただ彼等自身の声で話しているだけで、その為雪に生命がなく、だまったままでした。



James Kirkup
ジェームス カーカップ
署名


翻訳:起本 操
年月日:2003年5月25日

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